夏を喪くす
タイトル 夏を喪くす
著者名 原田マハ
出版社 講談社
読書期間 2025,8,28~9,3
どんな気持ちにぴったり?
会いたい、という気持ちに、どうして理由が必要なんだろう。
恋人、家族、友人。どうしようもなく会いたい人がいるけど、それが叶わない人だとしたら。
どんな形であれ人間関係で苦しい思いをした、している。
そんな苦悩を感じている人の心を癒してくれるはず。
4編の短編小説となっていて寝る前ベッドの上で、休日の暇な時間に、カフェでゆっくり、いろんなシーンで読みやすい一冊になっています。
読んだきっかけ
この本を手に取った理由はパッケージ、つまりはパケ買いです。
著者が選んだ特製セレクション・カバーで、アートに精通している原田マハが選ぶカバーなんて素敵に決まっているし、部屋にあるだけでとっても絵になるのです。
カバーがマットで触り心地も気持ちいい。そんなきっかけで手に取った一冊です。


読んでみた感想 ネタバレなし
主人公たちは欲望のままで自分が招いたことに苦しんでる感じ?こんな終わり方?
という感想でした。
主人公は全員女性で恋愛も人生も社会経験も豊富な脂の乗った40代くらい。
浮気している主人公がちらほら。
自分が招いたことなんじゃ・・・?そんな思いがもやつく。
終わり方も少し含みがあって、短編だからこそ読者の想像にお任せなところがあってスッキリしない。
直後はそんな感じ。
ただ読書記録を書いていく中で少しずつ変わっていく。
人はみんな完璧ではないし、過ちも犯す。
自分の犯してきたことに向き合い、向き合っている中で犯していたのは自分だけではなかったとハッとさせられ、自分も相手も許し、前を向いて進もうとする話なんじゃないかなと。
誰しも会いたい人がいる。
それが周りの人に公言できない相手だったりもう会うことが叶わない人だとしても、その思いに理由は必要ない。
自らの欲望に素直な主人公たちが思いのままに行動した果てに何を感じるのか。
そんな彼女たちの心の揺れと行動に魅了される、そんな一冊だったなと、読了感が一気に高まりました。
傷つきながらも会いたい人を探し求める彼女たちが前を向くまでの気持ちの揺れは心打たれるものがあります。
私にも後悔していること、周りには大きな声で言えない経験があります。
でも人間は完璧じゃないし、周りとの人間関係を築く上で傷つきながら学んでいくものなのではないでしょうか。
長い人生を生きていく中で傷つけ合いながらも前を向いて生きていく。そんな繊細な心と強い心を持っていきたいな〜なんて思わせてくれる特別な1冊となりました。
最後に
これからを生きる若い人にも、たくさんの経験をされてきた方にも心に刺さるものがあると思います。
恋焦がれてどうしようもなかったり、喧嘩して疎遠になってしまった友人だったり、もうこの世にはいない人だったり、誰にだって会いたい人っているはず。
今いる大切な人だっていつ別れるかわからない世界で私たちは生きているのです。
人と関係を築くことの厳しさ、裏切り、尊さを自分の経験と重ね、主人公たちと擬似体験し、少しの勇気をもらい、心の温かさを感じることができる1冊だと思います。
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