また、同じ夢を見ていた 読書記録

読書記録

どんな気持ちにぴったり?

孤立、孤独を感じている方、他者との関わりに悩んでいる方、過去の自分に後悔がある方。
少しどんよりした気持ちを晴らしてくれるようなヒントがあるかもしれません。

読んだきっかけ

母に勧められた1冊になります。
表紙を見てライトノベル小説かな?読んだことないしあまり気が進まないけど、母が勧めてくれているし読みやすいかな?なんていう気持ちで読み始めました。

読んでみた感想 

夜に読み始めたのですが、登場人物と主人公との会話に温かい気持ちになる一方で、主人公の不思議な体験にドキドキして一気に読み終えました。
読み終えた時には自分を抱きしめたくなるような気持ちになりながら気持ち良い眠りにつくことができました。

主人公は小学生の女の子。全てがこの女の子視点で話は進んでいきます。
知らない言葉や難しい言葉への純粋な子供の解釈に可愛らしいな、と思う一方でハッとさせられるようなこともあります。
主人公はとても賢いですが、周りの同級生を下に見ていてクラスには馴染めていません。
それでも放課後になると、黒猫を連れて、不思議な出会い方をした高校生の南さん、季節を売る仕事をしているアバズレさん、お菓子を作るのが上手なおばあちゃんの3人の友達に会いにいきます。
そんな中、授業で「幸せとは何か」を考えることになります。
友達も主人公と一緒に課題について考え、それぞれの答えを導き出していきます。
孤独を感じる中でどのようにして、どのような答えを出していくのか。
導き出した答えは胸に刺さるものがあります。

本書の中で何度も出てくるのが三百六十五歩のマーチの歌詞「幸せは歩いてこない、だから歩いていくんだね」という歌詞。
なんとも思わずに読んでいましたが、読み終わる頃には思い入れのある歌に感じていきます。

この物語では、南さんとアバズレさんの心理的課題も1つのテーマとなっています
精神分析家であるエリクソンが提唱した、「エリクソンの発達段階」と絡めながらお話ししようと思います。
この発達課題とは”人間が健全で幸福な発達をとげるために各発達段階で達成しておかなければならない課題”のことです。

青年期(13〜22歳)では「アイデンティティの確立と役割の混乱」が課題となります。
理想や憧れをきっかけに自己理解を深め、「これが自分だ」と思える感覚=アイデンティティを確立していく過程が、青年期の大きなテーマです。

成人期(22〜40歳)では「親密性と孤独」が課題となります。
他者との親密な関係づくりに失敗すると、孤独感や孤立感が強まります
親密性の課題を克服することができると、親密で持続的な関係を築き、他者と深く関わる力を得ます。

青年期である南さんと成人期であるアバズレさんは見事にこの発達課題の真っ只中。
南さんと主人公の出会いは、南さんがリストカットをしているのを目撃するところから始まります。
南さんは作家を目指しているのですがそれを認めることができずに苦しみ、孤独を感じています。
苦しみを共有できる人も周りにおらず、孤独感がさらに加速しています。
アバズレさんは、他者との親密な関係作りに失敗した過去があるようです。
それを克服することができずに苦しみ、自暴自棄になっています。
この2人が主人公との関わりを通してこの心理的課題をどのように乗り越えていくのか。
自らの力で乗り越えていく2人の姿には心がスッとする感覚があるはず。


ちなみにおばあちゃんはというと「統合性の確立」が課題となっています。
成功や失敗を含め、これまでの人生を肯定的に受け止められれば、「知恵」という力が備わります。
それは死を穏やかに受け入れる心の余裕にもつながります。


おばあちゃんはこの課題をクリアしているんですね。
主人公が「幸せが何か」の答えを導く大きな影響(知恵)を与え、死を穏やかに受け入れるような描写も出てきます。

まとめ

それぞれが通る心理的な課題が挙げられているこの本書は、皆さんの心に刺さるものがあるはず。
登場人物たちは主人公を通して幸せとは何かの答えを導き、主人公は登場人物を通して導いていきます。
幸せには他者との関わりが大きな影響を与えます。
家族や友人、職場、コミュニティと色んな場所で色んな人と関わることがありますが、私は関係性を大切にできているかな、相手にどんな影響を与えられているかなと自分の行動を見つめ直すきっかけにもなりました。
普段仕事に忙しくして改めて考えることのなかった自分にとっての幸せってなんだろう、を探してみようかなと思います。

皆さんにとっての幸せはなんですか?


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